ニュースから考える就職活動と転職活動 ~退職代行が流行るのはなぜか~

このページは最近世間をにぎわせているニュースから就職活動と転職活動の今後について考えてみるページだ。直接的なテクニックはないので、あくまでも雑学や持つべきスタンスのひとつとして読んでもらえると幸いだ。

 

2回目の今回取り上げるネタは、「退職代行」だ。学生にも社会人にもあてはまる大切な部分になってきている。近年になってあちこちで聞かれるようになったが、そもそも退職代行とはどのようなサービスなのか。

 

文字通りそのまま、とある企業からの退職を希望している人を退職させるサービス、と考えればわかりやすいしそのままだ。

 

例えば最も有名な例である「EXIT」の場合、lineかtwitter、または公式HPに連絡を入れて会社責任者の名前、連絡先、退職希望日といった基本的なデータとお金さえ払えばすぐに取り組んでくれる。

 

そのお金もアルバイトなら4万円、正社員なら5万円というレベルなので法外に高いわけではない。辞めたいと強く思う人なら、すぐにでも払えるレベルだろう。

 

ただ退職はもちろん自分1人でも当然できる。別に極論サービスに頼らなくても、明日から会社に行かないという形で退職することは可能なのだ。

 

法律的にも基本的には辞める2週間前に申し出をすれば辞めることができる。一部の有期雇用契約では若干違うが、それでも基本的に自分から申し出て辞められないなんてことはないのだ。

 

…にも関わらず、「EXIT」のようなサービスが流行るのはなぜか?

 

それは、今現代で働いている人たちの育った環境にあるのだ。わかりやすく学生(就職活動をして入社した企業)を辞める場合と、社会人が転職をするために現職の企業を辞める場合とで考えてみよう。どちらも大差はないのだが…

 

学生が辞める場合に利用する理由とは

 

ではまず初めに学生の場合で考えてみよう。学生が上記のような退職代行サービスを利用する理由は何か。色々あるだろうが、概ね次のような理由だ。

 

  • 自分で言うのが面倒くさい
  • ブラック企業のために言えば拳が飛んでくる
  • 後ろめたい気持ちがある(仲間に申し訳ない、など)

 

まぁ一番上の理由は論外として、2番目と3番目の理由は割とよくある理由だ。最初からブラック企業のためにそもそもコンプライアンスがまともに機能していない。あるいは自分がお世話になった先輩や上司に申し訳ない、といった理由が定番中の定番だな。

 

社会人が辞める場合に利用する理由とは

 

では次に社会人が辞めたいと思った時に使う理由を考えてみよう。学生の頃の理由ももちろん存在するが、ここでは社会人となって経験を積んだために、次のような理由が出てくる。

 

  • 退職するホントの理由を言えない(引き抜きなど)
  • 自分の人生の方向性に疑問を持ってしまった

 

これはいわゆる転職して、より待遇のいいところに行く場合に問題となることがある。自分が転職したことがバレて、特に同業他社の場合だと企業によっては嫌がらせなどを受ける場合がある。

 

また嫌がらせだけならいいが、技術系の企業の場合会社の社外秘を流用した、といった因縁をつけられて転職を妨害される可能性も否定できないためだ。この点で、連絡を完全に断つことができる転職代行サービスは強い

 

このように、ホントの理由を言えないので退職代行を利用するというパターンが出てくる。

 

一方で自分の人生の方向性に疑問を持って転職、あるいは退職する場合もある。例えば親に介護が必要になった、或いは女性の場合は子供が生まれたなどで働き方やライフスタイルが大きく変わった場合だ。

 

この場合に、自分の人生の方向性が大きくガラっと代わることがある。こうした点を伝えることが面倒だったり、企業側に理解してもらうことが大変であることが予想される場合に退職代行サービスを使うというパターンだ。

 

まぁこれらの理由はもちろん正統なものであり、現代では需要があるためにこの点は問題ではない。ただ、需要が増えた理由の1つにすぎず根本的な部分ではないと考えている。

 

では、このような退職代行サービスを利用する人が増えた理由の根本的な部分は何か。簡単だ。人とコミュニケーションを取ることを恐れる人が増えてきたためだ。

 

凄く乱暴に言えば、言葉でケンカできない人が増えてきたのである。乱暴だけどね。

 

これを大雑把に述べるなら昭和の人と平成の人とで考え方に大きな違いがある。この点に注目すると少し分かりやすいかもしれない。

 

昭和の人とは

 

昭和の人は苦しい状況を乗り越えてきた、という自負がある。全員が全員そうではないが、今の50歳以上は基本的には昭和の生まれだろう。まだ「ハラスメント」なんて言葉も存在しなかった時代の話である。

 

そんな中でも逞しく仕事をこなし、時には言い争いもして役員や社長になった人が多い。自分自身を否定されたことなんて結構ある。なので、体感として考え方が違う人を受け入れることの大変さも知っている。

 

しかし、一方で今現代の状況にはそぐわない昭和の常識でコトを語る人も多い。これが現代の若者や中堅の人と、コミュニケーションをとることが難しい理由の大きな要因でもある。

 

徒弟制度的な感覚で育った人や職人気質な人が多いのもこの年代である。汗をかいて人に感謝されなければ仕事じゃない、と言い切れる気概を持っているのである。自分のことは自分で責任を取れ、といったことを常識として語るのである。

 

平成の人とは

 

一方で平成の人とは、世の中がある程度平和になってモノが溢れて豊かな生活を初めから知っている人たちの世代とも言える。平成元年生まれが、2019年現在で考えるならば30代に入ったところだろう。

 

この年代の人たちは、私も含めて技術の急速な発展によってその恩恵にあずかりながらも同時に孤独感に悩んできた時代でもある。特にネットの発達によって、いつでもどこでも繋がれるような状況にありながら、実際にはそれに悩まされると言う矛盾を抱えている始末でもある。

 

ラインの既読無視問題などに代表されるように、繋がりを求めていることはわかるのだがそれを過剰に求める傾向がある。そして、自分や自分たちのグループ以外との交流を新しく作ることを苦手とする傾向もある。

 

ではこうした人が退職をしようとすると?

 

まぁ通常若い人が上司に向かって退職することを述べるわけだ。最終的なその決定権は人事部長なり中小企業では社長なりと、退職しようとする人と比較すれば年上の人間に話すことが多い。

 

そして構図としては、平成の人が昭和の人にお伺いを立てることになるのである。コミュニケーションを取ることが比較的苦手な世代が、経験豊富で多少頑固な考え方を持つ人に向かって「退職します」と言うのである。この構図が…原因ともいえる。

 

昭和の時代からの常識上、退職をはじめとする大切なことは口で直接言うのが当然だ!、と考える人…コミュニケーションが苦手でかつ合理的な面もあり、暑苦しい人たちと話すのも面倒だと考える人…まぁトラブルが発生する可能性はあるよな。

 

退職代行はこれらを繋げるためのサービスなのだ。というわけで、退職代行が流行るのはなぜか?

 

価値観と常識が異なる人たちを繋げることができるサービスだからである。

 

~退職代行が流行るのはなぜか~のまとめ

 

「EXIT」に代表される退職代行が流行る理由は色々ある。しかし根底にはコミュニケーションの取り方に問題があり、価値観や常識が一致しないために円滑な退職や転職が以前に比べてしにくくなったためである。